注文服か、さもなくば裸か

2011.06.11

見た目だけではない。着心地という点でも注文服は傑出している。前述した日本のシャツ職人の発言は稀なケースではない。すぐれた職人は客の体の個性を見抜き、その体をモチーフにどんなスーツが見映えがするか、着心地のよさはどうやって生み出せるかを決める。はじめてスーツを仕立てる人は、仮縫いまでは進捗途中の自分のスーツが本当にいいものなのかどうか判断できず、不安な心持ちである場合が多い。しかし、仕立てあがりの日、店ではじめて完成品を試着したとき、今まで抱いていたモヤモヤは一瞬で氷解する。「なんて軽い着心地なのか!今まで着てきたスーツはいったいなんだったのだろう!」そして、歩いたり、座ったり、さまざまな動きの中で、注文服がさらにやさしい着心地で、なんのストレスもなく、体に無理なく寄り添っているのを実感するのだ。よく、会社員がオフィスに着いた途端、上着を脱ぎ、さあ仕事をはじめるぞ、といった光景に出くわす。あるいは夕刻、外回りから帰ってきて、ふう、と息をつきながら無意識に上着を脱ぐといった場面。これらはつまり、スーツを着ているときより、シャツ姿になったほうが格段に安楽だからだ。しかし、すぐれた注文服は反対だ。脱いだ状態よりも着ている状態のほうがずっと気持ちいい。妙なたとえだが「裸でいるのにあたたかい」感じ。以前、イタリア人の友人にいわれたことがある。「注文服の本当の魅力を一度知ってしまったら、最高の心地よさを味わうのは注文服を着ているか、さもなくば裸でいるか、どちらかになる。その中間はない」と。スーツは堅苦しい服ではあるけれど、男として社会と向き合うために、皆が少し我慢して身につけなければならないものだった。しかし、人生の後半にきて、もうその我慢はしなくてもいいのではないか。カジュアルな服一辺倒になれという意味ではない。着心地はまるでパジャマのようにリラックスできて、それとは裏腹に見た目はきちんとしている。そんな注文服と出会うことができたら、人生は変わる。

[ブランド通販サイト]
スーツ通販
http://www.konaka.jp/