実情は小売店からの要望がメーカー側になかなか流れません。メーカーは末端の小売店事情に耳を貸さないことが多いのです。というのも、メーカーはダースやグロス単位の注文でなければ耳を傾けません。採算を考えると単品の生産にこだわっていたのでは利益が出ませんから、メーカーの仕事はどうしても量産品に重きを置かざるを得ません。量産品はコストを安くできるし、リピートの注文を受けることが可能です。そこでメーカーは、量産可能な宝石を作ることになってしまうわけです。こうした事情から、宝飾店にはメーカーから納品されてくる一律の企画量産品が並ぶことになります。それを容認する小売店はただ黙々と仕入れた商品を販売することになり、それを買う消費者は妥協を余儀なくされます。宝飾メーカーは消費者の妥協の上にあぐらをかいて経営を続けてきたのです。でも、最近の消費者は“妥協”しなくなりました。メーカーが提供する宝石と消費者が求める物の間にズレが生じてしまっています。メーカーから消費者への一方的な流れを変えて、消費者の要求をしっかりと受け止め、それを宝飾フォルムに生かすには小売店の役割が非常に重要なのです。消費者の声を直接聞けるのは小売店です。消費者のニーズを最大限に引き出して、商品化に生かす情報の発信基地が小売店。つまり小売業者こそ宝飾文化を創り出す要なのです。エンドユーザーのニーズからデザインを起こして、メーカーや職人を動かしていく。この流れを主流にしないと、日本の宝石のレベルはヨーロッパや香港の模倣から抜け出せないでしょう。宝石を作るのはメーカー、小売店に納入するのは卸業、小売店は消費者に販売し、消費者はその中から買わざるを得ないという構図が日本の一般的な宝飾ビジネスです。この構図の中に、日本の宝石がヨーロッパやアジア以下である原因があるように思えます。日本の宝飾文化を豊かなものにするには、この流れを変えなければならないのです。